発達障害当事者が利用できる障害福祉サービス及び各種支援制度について解説

発達障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)といった、脳の機能障害です。

障害の程度に個人差はありますが、日常生活に支障をきたしている場合など、必要に応じて障害福祉サービスを利用できます。18歳以上の発達障害当事者の場合、障害福祉サービスは基本的に障害者総合支援法に基づいたです。

この記事では、発達障害当事者が利用できる福祉サービスやそれ以外の支援制度について解説します。

発達障害当事者が利用できる福祉サービス

発達障害者の場合、主に障害者総合支援法に基づいた福祉サービスが利用できます。

障害の程度によっては、利用できないものもありますが、ここでは全ての障害福祉サービスを紹介します。なお、現金給付式の障害福祉サービスはないことを覚えておくとよいでしょう。

福祉サービスは、以下の3分類に分かれる。

  • 介護給付
  • 訓練等給付
  • 地域相談支援給付

それぞれに複数のサービスがあり、サービスの合計は20種類です。

1.介護給付

介護給付とは、主に身体介護や家事援助、外出時の支援などを行う、障害福祉サービスのことです。全部で9種類あります。

1.居宅介護

ホームヘルパーが自宅を訪問して、入浴や食事の介助、買い物や調理の支援などを行うサービスです。

2.重度訪問介護

重度の肢体不自由や精神障害、知的障害の方が対象です。ホームヘルパーが自宅を訪問して、入浴や食事の介助、買い物や調理の支援などを行います。

日常生活における、さまざまな介護の事態に対応するための見守りを含みます。

3.同行援護

視覚障害者が外出したり、移動したりするときに必要な情報提供や、支援、介護を行うサービスです。

4.行動援護

知的障害者や精神障害者などの障害により、危険回避が難しい方が対象です。外出や移動の際に、危険を回避するために必要な見守り、支援、介護を行います。

5.療養介護

医療的なケアや介護を必要とする方が対象です。定められた医療機関で、機能訓練や療養上の管理、看護、介護、日常生活の世話を行います。

6.生活介護

障害のため、常に介護を必要とする方が対象です。日中、入浴や食事、排泄等の介護を行うほか、創作的活動及び生産的活動の場を提供します。

7.短期入所(ショートステイ)

自宅で介護を受けている方が、介護者や病気や冠婚葬祭などで一時的に在宅での生活が難しくなった場合に、施設に短期間入所してもらい、介護を行うものです

8.重度障碍者等包括支援

障害者の中でも、特に介護を必要とする方が対象です。居宅介護(ヘルパー派遣)といった複数のサービスを包括的(まとまって)提供します。

9.施設入所

施設に入所している障害者が対象です。主に夜間において、入浴や排泄、食事等の介護、生活等に関する相談・助言のほか、必要な日常生活上の支援を行います。

2.訓練等給付

障害を持つ方が、自立した生活を行うための支援を中心とした障害福祉サービスです。介護給付と同様、9種類あります。

1.自立訓練(機能訓練)

自立した生活を送るために、一定期間、身体機能の維持・向上を目的としたリハビリを行うサービスです。

2.自立訓練(生活訓練)

自立した生活を送るために、一定期間、生活能力の維持・向上を目的とした支援や訓練を行います。

3.宿泊型自立訓練

精神障害や知的障害のため、自立訓練(生活訓練)を受けている方が対象です。居室(部屋)やその他の設備を利用させるとともに、家事などの日常生活能力を向上するための支援、生活等に関する相談・助言を行います。

4.就労移行支援

働くことを希望する65歳未満の障害者が対象です。生産活動や職場体験などの機会の提供を通じて、働くことに必要な知識や能力を向上させるための訓練、及び就労に関する相談や支援を行います。

5.就労継続支援A型(雇用型)

通常の企業などで就職することが困難な障害者が対象です。

雇用契約に基づいて、生産活動その他の活動の機会の提供や、働くために必要な知識および能力の向上のために必要な訓練、その他必要な支援を提供します。

6.就労継続支援B型(非雇用型)

通常の企業などで就職することが困難な障害者が対象です。生産活動その他の活動の機会の提供や、働くために必要な知識および能力の向上のために必要な訓練、その他必要な支援を提供します。

就労継続支援事A型と違い、雇用契約を結ばない形です。

7.就労定着支援

就労移行支援や就労継続支援などを利用して、働き始めた障害者が対象です。働き続けられるように、関係機関との連絡・調整や当事者への相談・助言を行います。

8.自立生活援助

施設や病院などを出て、地域での一人暮らしを始めた障害者が対象です。生活上の困りごとを聞いて、解決できるように支援を行います。

9.共同生活援助(グループホーム)

障害を持つ方が少人数で共同生活を行うサービスです。住んでいる方に対して、困りごとの相談、日常生活上の援助、入浴や排泄といった身体介護などを行います。

3.地域相談支援給付

障害を持つ方が、地域で生活するにあたって必要な支援を行うサービスです。地域移行支援と、地域定着支援の2種類があります。

1.地域移行支援

施設に入所している方や、精神科の病院に入院していて、地域での生活を希望している方が対象です。地域で生活するための住居の確保や、生活相談や助言など、地域社会へ移行するために必要な支援を行います。

2.地域定着支援

主に一人ぐらしをしている障害者が対象です。緊急に支援が必要な事態が生じた際に、緊急訪問や相談などの必要な支援を行います。

福祉サービス利用にあたっての手続き

障害があるという状況だけでは、福祉サービスを利用できません。基本的には、障害支援区分認定を受けることが必要です。

ここでは、一般的な手続きについて解説します。

1.障害支援区分認定

障害支援区分認定とは、障害の特性や、どれだけ支援や介護が必要かを示す目安になるものです。

区分1~区分6まであり、数字が大きいほど支援や介護の必要度が高くなっていきます。なお、区分によっては利用できないサービスもあるので、注意が必要です。

障害支援区分認定を受ける流れは以下のとおりです。

  1. 市区町村役場にて申請
  2. 認定調査員による調査
  3. コンピューターによる一次判定
  4. 認定審査会による二次判定(※)
  5. 障害支援区分の認定、本人への通知

    (※調査での特記事項や主治医意見書、審査会の意見に基づいた判定です)

2.サービス等利用計画案作成

障害支援区分の認定後、特定相談支援事業所がサービス利用の意向の聴き取りや、サービス等利用計画案を作成して、市町村に提出します。

3.支給決定

必要に応じて、市町村の認定審査会で意見を聴き取りしたり、サービス等利用計画案の内容を検討したりした上で、支給が決定されます。決定するのは市町村です。

4.障害福祉サービス受給者証交付

支給が決定されたら、障害福祉サービス受給者証が交付されます。障害の程度にもよるが、発達障害者も受給者証を受けて、サービスを利用することが可能です。

なお、受給者証と障害者手帳は別物であり、障害者手帳がなくても、受給者証を交付される場合もあります。

5.サービス利用開始

受給者証交付後、サービス事業所と契約して、サービス利用開始となります。

障害福祉サービス利用時の料金

障害福祉サービスの料金(自己負担額の月額上限)は、所得に応じた4段階です。

詳しくは、下記の表をご覧ください。

生活保護世帯月額0円
市町村税非課税世帯(世帯収入300万円以下)月額0円
市町村税課税世帯のうち世帯収入600万円以下月額9,300円
市町村税課税世帯のうち世帯収入600万円以上月額37,200円

発達障害当事者が利用できる障害福祉サービス以外の支援制度

障害福祉サービス以外にも、発達障害当事者が利用できる支援制度があります。

ここでは2つ紹介しますので、参考になさってください。

1.自立支援医療制度

自立支援医療制度とは、精神科への通院治療を必要とする方が対象です。医療費の自己負担軽減を目的としております。

1.対象となる疾患や障害

対象となる疾患や障害は、以下のとおりです。

  • 統合失調症
  • うつ病や双極性障害などの気分障害
  • 薬物などの精神作用物質による急性中毒またはその依存症
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)などのストレス関連障害
  • パニック障害などの不安障害
  • 知的障害、心理的発達の障害
  • アルツハイマー病型認知症、血管性認知症
  • てんかんなど

「知的障害、心理的発達の障害」とあるように、発達障害者も対象になります。

2.対象となる治療

対象になる治療は、外来での診察、投薬、デイケア利用、訪問看護などです。入院治療や、保険適用にならないカウンセリングなどは対象外ですので、注意してください。

3.利用者負担額

一般的には、3割負担が1割負担になります。1割負担についても、所得に応じて上限があります。詳しくは、下記の表をご覧ください。

所得区分世帯所得負担月額上限(一般)負担月額上限
(重度かつ継続)
生活保護生活保護世帯0円0円
低所得1市町村民税非課税

(本人または、障害児の
保護者年収が80万円以下)

2,500円2,500円
低所得2市町村民税非課税

(低所得1以外)

5,000円5,000円
中間所得1市町村民税33,000円未満総医療費の1割または高額療養費の自己負担限度額5,000円
中間所得2市町村民税33,000円以上235,000円未満10,000円
一定所得以上市町村民税235,000円以上対象外20,000円

4.申請方法

居住地の市区町村担当窓口にて申請します。窓口は、障害福祉課などです。

申請書や医師の診断書、所得が確認できる書類などが必要ですが、居住地によって異なりますので、申請の前に問い合わせてみることをおすすめします。

2.相談窓口

発達障害当事者のための相談窓口は、市区町村の障害福祉関連部署や、発達障害者支援センターなどです。

発達障害者支援センターは、発達障害当事者への専門相談支援を行う機関です。全ての自治体にはありませんが、各都道府県に1つ以上あります。一度調べてみてはいかがでしょうか。下記のリンクは、全国の発達障害者支援センターの一覧です。

発達障害者支援センター・一覧

まとめ

この記事では、発達障害当事者が受けられる福祉サービスや支援制度を解説しました。

発達障害の程度には個人差があり、サービスを利用せずに生活できる方から、さまざまなサービスを必要とする方までさまざまです。

生活に支障をきたしている場合は、家族や主治医などに相談して、障害福祉サービスや各種支援制度を利用することを考えましょう。1人で悩まないことが大切です。

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