「一人暮らしをしている高齢の親が、体調を崩しやすくなっている」
「一人暮らしはもう限界ではないだろうか」
「高齢者の一人暮らしが限界になるサインを知りたい」
親と離れて暮らしている子ども世帯、特に40代から50代の方の中には、このような心配や悩みを抱えている方も多いことでしょう。
高齢者の一人暮らしが限界になっているサインとしては、身体機能の低下や認知症症状の出現などがあげられます。
この記事では、高齢者の一人暮らしが限界になっているサインや、対処法などを解説します。
ご家族の不安が軽減できる内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
1章:高齢者の一人暮らしが限界になってきている5つのサイン
高齢者の一人暮らしが限界になってきているサインは、主に以下の5つです。
- 身体機能の低下が見られる
- 認知症の症状が現れる
- 生活習慣の乱れが目立つ
- 家の中の乱れが目立つ
- 本人が不安を感じている
それぞれ解説します。
身体機能の低下が見られる
高齢者の場合、加齢にともない、さまざまな身体機能の低下が見られます。代表的なものが、筋力や骨密度の低下です。寝返りや起き上がり、歩行が不安定になることも少なくありません。骨密度の低下により、転倒時に骨折する可能性も増えていきます。
体力や回復力も低下するため、若い頃と比較して病気にかかりやすく、治りにくい状況です。
身体機能の低下により、入浴や食事、排泄といった日常生活動作に介助が必要になる場合もあります。特に、排泄に介助を必要とする状況では、一人暮らしが難しくなる可能性が高いでしょう。
認知症の症状が現れる
記憶力や判断力の低下といった認知症症状が現れると、一人暮らしが難しくなってきます。
服薬管理や金銭管理が難しくなるため、健康状態の悪化や詐欺被害、金銭トラブルなどを招く可能性が高まるでしょう。
調理中であることを忘れて、ガスの火を付けたまま台所を離れてしまい、ボヤもしくは火災を引き起こすケースもあります。
外出したあと、家までの道が分からなくなり帰宅できない場合もあります。
生活習慣の乱れが目立つ
生活習慣の乱れも、一人暮らしが限界になるサインの1つです。主な例を以下に示しました。
- ごみ収集の日を忘れてしまい、家庭内にゴミが増える
- 食事をしたりしなかったりする
- 入浴や着替えの頻度が減る
- 掃除や洗濯、調理がおっくうになってきている
「今まではできていたのに、できなくなっている」点がポイントといえるでしょう。
家の中の乱れが目立つ
身体機能や認知機能、意欲の低下により、家の中の乱れが目立つ点もサインの1つです。
- 冷蔵庫の中が腐った食品だらけである
- トイレや浴室などが不衛生な状況である
- 電気・ガス・水道の支払いを忘れている
このような状況の場合、日常生活に大きな支障をきたしていると考えられます。
本人が不安を感じている
高齢者本人が何らかの不安を抱えていて、「一人暮らしは限界ではないか」と考え始めることもあります。
2015年度(平成27年度)の東京都福祉保健基礎調査「高齢者の生活実態」によると、ひとり暮らし高齢者の中で「心配ごとや悩みごとはない」と回答した方は24.4%でした。
7割以上の方が、何らかの心配ごとや悩みごとがあると回答しています。
心配ごとや悩み事の内訳を見ると、もっとも多かったのは「健康や病気について」の54.8%でした。
その他の回答としては、以下のようなものがあげられました。
- 生活費や経済的なこと:23.3%
- 年金・医療・介護など社会保障給付の水準:22.7%
- 地震などの災害にあうこと:22.0%
不安を抱えながらの一人暮らしは、高齢者にとって大きなストレスといえるでしょう。
(参考資料)
東京都公式ホームページ|平成27年度「高齢者の生活実態」第 11 章ひとりぐらし高齢者(単身世帯)の生活実態
(196ページ)
2章:一人暮らしの高齢者が抱える生活上のリスク
一人暮らしの高齢者は、生活上にさまざまなリスクを抱えています。
主なものを以下に示しました。
- 急病やケガに対処できない
- 認知症の発症や進行に気づけない
- 詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすい
- 自然災害への対応が難しい
- 社会的に孤立しやすい
それぞれ解説します。
急病やケガに対処できない
高齢者は筋力低下に寝返りや起き上がり、歩行が不安定で転倒しやすい状況です。骨密度も下がっているため、骨折のリスクも高いといえます。
高齢者は体力や免疫力も低下しており、もともと病気がある方は悪化しやすくなり、急な体調不良が起きやすい状況です。肺炎やインフルエンザ、新型コロナウイルスなど感染症にかかった場合、重症化しやすい点も特徴です。
このような急病やケガのとき、一人暮らしの場合は、病院を受診したり救急車を呼んだりといった対処が難しいでしょう。
認知症の発症や進行に気づけない
認知症が原因で、物忘れがひどくなったり判断力が低下していたりしていても、自分で気づけない場合もあります。家族や友人、近所の方との交流が少ない場合、なおさら気づきにくいでしょう。
認知症の発症や進行に気づかないまま一人暮らしを続けた場合、薬やお金の管理が困難な状態になり、体調悪化や日常生活上でのトラブルが発生することも考えられます。
認知症が進行して自宅の外を徘徊するようになり、行方不明になる可能性もゼロではありません。
詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすい
一人暮らしの場合、高齢者を狙った特殊詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすい状況です。
主な特殊詐欺としては、以下のようなものがあげられます。
- 架空請求詐欺
- 振り込め詐欺
- 還付金詐欺
2024年(令和6年)版高齢者白書データによると、2023年(令和5年)中の特殊詐欺認知件数は、1万9,033件でした。このうち、高齢者(65歳以上)の被害認知件数は1万4,878件です。特殊詐欺被害者の約78%が65歳以上の高齢者という結果でした。
(参考資料)
内閣府令和6年版高齢社会白書(全体版)|4 生活環境
2024年(令和6年版)消費者白書によると、高齢者の消費生活相談件数は、2023年で27.7万件でした。ピークであった2018年の35.8万件からは減少していますが、2021年、2022年から再び増加に転じています。
主な相談内容は携帯電話サービスや化粧品販売、屋根工事などです。
(参考資料)
令和6年版消費者白書|第1部第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等
(24ページから26ページ)
自然災害への対応が難しい
高齢者の一人暮らしの場合、さまざまな災害に対応できない可能性が高いといえます。
2024年に発生した大きな災害を以下に示しました。
- 能登半島地震
- 各地の大雪被害
- 各地の大雨被害
- 宮崎県日向灘を震源とする地震
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)
- 台風10号による被害
(参考資料)
総務省消防庁|令和6年災害情報一覧
災害発生時は、迅速な避難を必要とする場合もありますが、心身の機能や判断力の低下により避難が遅れてしまう高齢者も少なくありません。
社会的に孤立しやすい
社会的な孤立とは、家族や地域コミュニティなどとのつながりが少なく、他者との交流がほとんどない状況です。誰とも会話をしない、近所づきあいがない、困ったときの相談相手がいない状況ともいえるでしょう。
孤立状態が続くことで、孤独死のリスクも高まります。
千葉大学による研究では、社会的孤立者は、孤立していない方と比較して、総死亡リスクが1.20倍、心血管疾患死亡リスクが1.22倍、がん死亡リスクが1.14倍という推計結果が出されました。
孤立は精神的な面だけではなく、身体面にとっても大きなリスクといえます。
(参考資料)
千葉大学 社会予防医学研究部門 – 240613
3章:高齢者の一人暮らしが限界を迎えたときの選択肢
高齢者の一人暮らしが限界を迎えたときの選択肢は、主に以下の3つです。
- 各種サービスの利用
- 家族との同居
- 高齢者施設への入居
それぞれ解説します。
各種サービスの利用
介護保険サービスおよび介護保険外サービスを利用しつつ、ひとり暮らしを続けることも1つの方法です。
介護保険サービス
主な介護保険サービスとしては、以下のようなものがあげられます。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護
- 通所リハビリ
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 住宅改修
介護保険サービス利用や、要支援・要介護認定に関する相談先は、市区町村役場の介護保険担当部署です。
介護保険外サービス
介護保険外サービスは、市区町村や社会福祉協議会、民間企業などが独自に実施しているサービスです。
主なものとしては、以下のようなものがあげられます。
- 緊急通報システム
- 配食サービス
- テレビ電話による安否確認
- 外出支援サービス
- 買い物支援バス
介護保険以外のサービスについて詳しい知りたい方は、市区町村の地域包括支援センターや高齢者福祉担当部署に問い合わせてみましょう。
家族との同居
各種サービスを利用してもひとり暮らしが難しくなった場合、家族との同居が選択肢の1つとしてあげられます。
高齢者が家族と同居するメリットは、主に以下のとおりです。
- 緊急時に家族がすぐに対応できる
- 親の健康状態が把握できる
- 家事を分担できる
しかし、家族との同居にはデメリットも存在します。
- 親子間の生活リズムや価値観の違いがストレスになる
- 親が子の家で同居する場合、住み慣れた地域を離れることになる
- 親にとっては、環境の変化による認知症発症のリスクがある
親が家族のもとに身を寄せる場合、なかなかなじめす家庭内や地域で孤立する可能性もあるでしょう。
同居を決める前に、本当に親が同居を望んでいるかどうか、他の家族は同居を受けいれているか、などを確認する必要があります。
同居に向けて動く場合、日常生活上のルールを明確にしておくことが大切です。主なものを以下に示しました。
- 起きる時間
- 寝る時間
- 食事の時間
- 入浴の時間
- 家事の分担
同居は高齢者および子ども世帯にとって、大きな環境の変化であると理解しておきましょう。
高齢者施設への入居
高齢者施設への入居も選択肢の1つです。
施設には職員が常駐しており、生活相談や安否確認、家事援助、身体介護などを受けられます。協力医療機関による、定期的な診察や緊急時対応も可能です。
主な高齢者施設を表に示しました。
施設の種類 | 入居対象 | 提供されるサービス | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
自立 | 要支援 | 要介護 | 食事 | 介護 | 医療・看護 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 〇 | 〇 | 〇もしくは△ | 〇 | △ | × |
介護付有料老人ホーム | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
住宅型有料老人ホーム | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × |
健康型有料老人ホーム | 〇 | × | × | 〇 | × | × |
ケアハウス(一般型) | 〇 | △ | △ | 〇 | △ | △ |
ケアハウス(介護型) | × | × | 要介護1以上 | 〇 | 〇 | △ |
グループホーム | × | 要支援2 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
特別養護老人ホーム | × | × | 原則要介護3以上 | 〇 | 〇 | 〇 |
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の単身世帯・夫婦世帯が入居できるバリアフリー構造の賃貸住宅です。
自立の方から要介護認定を受けている方までが入居対象であり、安否確認と生活相談を受けられます。介護サービスを受けるときは、外部の介護サービス事業所と別途契約する必要があります。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、要支援および要介護認定を受けている方が入居できる施設です(自立の方が入居できる施設もある)
食事の提供や日常生活の見守り、緊急時対応、施設職員による身体介護といったサービスを受けられます。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立の方から要介護認定を受けている方まで入居できる施設です。
食事の提供や日常生活上の見守り、緊急時対応といったサービスを受けられます。介護サービスを受けるときは、外部の介護サービス事業所と別途契約する必要があります。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、健康で日常生活が自立している方が入居できる施設です。
食事の提供や日常生活の見守り、家事援助などのサービスを受けられます。
要介護状態になったら、契約を解除し退去する必要があります。
ケアハウス(一般型)
一般型ケアハウスの入居対象は、自宅での生活に不安がある方、60歳以上で身の回りのことが自分でできる方です。
食事の提供や日常生活上の見守り、家事援助、緊急時対応などのサービスを受けられます。介護サービスを受けるときは、外部の介護サービス事業所と別途契約する必要があります。
ケアハウス(介護型)
介護型ケアハウスの入居対象は、自宅での生活に不安がある方、65歳以上で要介護1以上の認定を受けている方です。
食事の提供や日常生活の見守り、緊急時対応、施設職員による身体介護といったサービスを受けられます。
グループホーム
グループホームは認知症高齢者の専門施設で、以下の3点に該当する方が入居可能です。
- 認知症の診断を受けている
- 要支援2以上の認定を受けている
- 施設と同じ市区町村に住所がある
認知症の方がユニットと呼ばれる、5人以上9人以下の生活単位で共同生活を送ります。
入居者が職員と共に調理や掃除、洗濯などの家事をする点が特徴です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、原則として要介護3以上の認定を受けている方が入居できる施設です。
入浴や食事、排泄等の身体介護や機能訓練、緊急時対応、医療及び健康管理を受けられます。
高齢者の一人暮らしが限界になったときは本人の意思を尊重した対処法を検討しよう
高齢者の一人暮らしは、さまざまなリスクが伴います。
身体機能の低下や認知症症状が出てきたとき、本人から「一人暮らしが大変」という不安が出てきたときなどが、一人暮らしが限界になっているサインといえるでしょう。
家族との同居や施設入所といった対処法がありますが、いずれにしても、高齢者本人の生活環境は大きく変わります。本人の意思を尊重した上で、対処法を選びましょう。
施設入所をお考えの場合は、老人ホーム検索サイト「シニアホームの窓口」をご利用ください。
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