発達障害の人は、さまざまな困りごとを抱えており、「仕事でミスばかりしている」、「仕事が長続きしない」という悩みを持ちがちです。
発達障害の主なものとしては、
- ADHD:注意欠如・多動症
- ASD:自閉スペクトラム症
- LD:学習障害
の三区分があります。
ADHDの主な困りごとは、じっとしていられない、集中することが苦手、よくものをなくす、忘れ物が多い、順番を待つことが苦手などです。
ASDには、言葉の遅れ、コミュニケーションの障害、こだわりの強さ、感覚過敏などの症状があります。
LDは、知的な遅れがないのに、読む・書く・聴く・話す・計算する・推論するの6つの能力のうち、1つ以上に障害があるものです。
三区分ごとに障害特性は違いますし、困りごとも違います。そのため、向いてる仕事もそれぞれです。
この記事では、向いてる仕事や向いてない仕事、向いてる仕事に転職する方法などをご紹介します。
発達障害の人に向いてる仕事
発達障害の人に向いている仕事はない、もしくは少ないと言われることもありますが、私自身は「向いてる仕事はある」と考えています。個人的な意見になりますが、発達障害だからといって、何もできないわけではないからです。
ここでは、一般的に言われている障害三区分別に、向いてる仕事をご紹介します。
1.ADHDの人に向いてる仕事
ADHDの人に向いている仕事として、一般的にあげられるのは、
- 営業職
- 研究者
- 雑誌の編集者・記者
- Webデザイナー
- イラストレーター
などです。
ADHDの特性の1つである衝動性は、ひらめきやアイデアが浮かびやすい、行動力があるという長所につながります。この点を活かせる仕事が向いているといえるでしょう。
また、ITエンジニアやプログラマーなども、向いていると言われます。専門知識を身につける必要はありますが、パソコンに関する仕事をしてみたいと思う人は、選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。
2.ASDの人に向いてる仕事
一般的に、ASDの人に向いてる仕事としては、
- 経理・財務職
- 研究者
- 工場の製品管理
- 清掃業
- Webデザイナー
- Webライター
などがあげられます。
規則正しいルーティンワークを続けることやパソコン操作、専門知識を覚えることが得意というのがその理由です。
実は、この記事を書いている私自身もASD当事者です。パソコン操作が好きで、他の人とコミュニケーションが少ないという点では、向いているとは思います。(ただし、まだまだスキルアップが必要ですが)
ただ、仕事の幅を広げるためには、コミュニケーションスキルも必要です。そのため、人に会うことや話をすることも大切にしたいと思っています。
3.LDの人に向いてる仕事
LDの人に向いている仕事として一般的に挙げられるのは、デザイナーやカメラマンなどです。
デザインソフトやカメラについては、実際に操作することで使用方法を理解することが多いため、マニュアルを「読む」ことが難しい人も対応しやすいといわれます。
LDの場合は、自分が困難に感じている分野を避けたり、難しい部分のサポートを受けたりすることで、向いてる仕事が増える可能性があります。
サポートの例としては、
書くことが難しい人の場合:仕事の指示を受けるときに、スマートフォンやICレコーダーなどで録音の許可をとる。
読むことが難しい人の場合:音声や動画による業務マニュアルがある仕事を選ぶ、書類を読むときには、パソコンやスマートフォンの文章読み上げ機能を使う。
などがあるでしょう。
向いてる仕事への転職に役立つ4つの方法
ここでは、発達障害の人が「自分に向いてる仕事」につくための方法を4つお伝えします。
1.ハローワークに相談する
ハローワークには、障害のある方の就職を支援することを目的として、専門知識を持った相談員が配置されています。そのため、仕事に関する情報提供や就職に関する相談などが受けられるのです。
障害者手帳がない人も利用することができます。
私も再就職に悩んだ際に、ハローワークの専門窓口にお世話になりました。ていねいに話を聴いてくれた上に、具体的なアドバイスをもらえたことを覚えています。
2.専門支援機関に相談する
主な専門支援機関は、
- 就労移行支援事業所
- 障害者職業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
- 発達障害者支援センター
などです。
ハローワークや医療機関とも連携していますので、気になる人はハローワークもしくは主治医を通じて、相談してみてはいかがでしょうか。
3.転職エージェントを利用する
転職エージェントとは、仕事を探している人と企業を結びつけるサービスです。
発達障害を含めた、障害を持つ人向けの転職エージェントもあるので、利用するのも1つの方法でしょう。
キャリアカウンセラーやアドバイザーと呼ばれる担当者は、発達障害に関する専門知識があり、その人の障害特性に合わせた仕事探しの支援を行います。
仕事探し、応募書類作成、面接対策といった一般的な支援のほか、就職後のアフターフォローも手厚いのが特徴です。
4.障害者雇用を選択肢に入れる
障害者雇用とは、ひと言でいうと、障害のある人専門の雇用枠です。
障害者一人ひとりの特性に合わせた働き方ができることを目的とした制度になります。「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められているもので、障害者手帳を持っている人が対象です。
障害を持っていることをオープンにして働くことになるので、職場の人の理解や配慮が得られやすい反面、求人数が少ないというデメリットもあります。
発達障害の人に向いてない仕事
発達障害の人は、障害特性からくる困りごとがいくつかあり、その関係で、残念ながら向いてない仕事も存在します。
ここでは、向いてない仕事及び障害特性に関する困りごとを三区分別に紹介しますので、参考になさってください。
1.ADHDの人に向いてない仕事
ADHDの中でも、特に不注意が強いタイプの人は、医師や看護師などの医療職、保育士や介護職などの福祉関係が難しいといえるでしょう。これらの仕事は、少しのミスにより人の命に関わる場合があるからです。
また、事務職もADHDの人にとっては向いてない仕事といわれています。
事務職は電話応対、来客対応、書類作成、データ入力などさまざまな業務が求められる仕事です。ADHDの場合、複数の業務を同時に行うマルチタスクも苦手なので、事務職は辛いものになる可能性が高いとされます。
2.ASDの人に向いてない仕事
ASDの人の場合、営業職や接客業、販売職などは難しいかもしれません。
これらの仕事は、お客様とのスムーズなコミュニケーションや、臨機応変な対応が求められるからです。
ASDには、スムーズな会話が苦手、急な予定変更に対応することが難しい、周りの空気が読めない、あいまいな表現が理解できないなどの特性があります。
感覚過敏も困難さを強くします。例えば、聴覚への過敏があると、人の声が多くて騒がしい場所では仕事に集中できないといった困りごとが生じるでしょう。
そんな私ですが、前職は保健師及び介護職でした。ケアマネージャーの経験もあります。どれも、人とのコミュニケーションが欠かせないもので、実はかなり苦労しました。
3.LDの人に向いてない仕事
LDは、困難な分野によって、向いてない仕事が違ってきます。
読むことが難しい人の場合:たくさんの書類やマニュアルを読まなくてはいけない仕事
書くことが難しい人の場合:手書きの書類(会議録など)を多く作る必要がある仕事など
計算が難しい人の場合:金銭を扱うことが多い仕事や、時間管理が厳しい仕事
などがあるでしょう。計算が難しい人の中には、時計を読むことが苦手な人もいます。
発達障害の人が仕事で困らないために
発達障害の人が仕事での困りごとを軽減する方法は、さまざまです。
- 自分の障害特性、苦手なこと、得意なことを事前に知っておく
- 職場の人に、自分の特性や得意不得意を伝える
- 自分用の業務マニュアルを作る
- 今取り組んでいる仕事を紙に書いて「見える化」する
- 職場や相談支援機関の人などに相談する
などがあります。
障害特性を隠したまま働くと、自分ではまじめに働いているにも関わらず、「トラブルやミスが多い人」、「仕事ができない人」という印象を持たれる可能性があります。
そのため職場内での人間関係がうまくいかなくなり、退職につながることもゼロではありません。
私は、発達障害の診断書と障害者職業センターでの検査結果をコピーして、転職面接時に提出しました。また、上司への相談は、困りごとを紙に書いて渡すという方法をとりました。
口頭での相談が苦手だったからです。
まとめ
この記事では、発達障害の人に向いてる仕事及び、その仕事につくための方法、向いてない仕事などについてお伝えしました。
ただし、一般的に向いてると言われている仕事でも、「自分には向いてない」という場合もあります。
向いてない仕事について、辛い思いをしないためにも、自分自身のことをよく知ることが大切です。それを職場の人や支援機関の人に相談して、サポートを得られれば、仕事での困りごとを減らせる可能性もあります。
自分の得意や苦手を知る、人に伝える。どちらも勇気がいることでしょう。しかし、これらのことは、向いてる仕事につくためには大事なことです。
この記事が、仕事のことで悩んでいる発達障害の人にとって役立てば幸いです。
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